私は乳幼児保育の保育者として20年勤め、退職後は30年間、「子どもと関わる仕事」にこだわり「子どもの豊かな成長をめざす」ために絵本の普及活動をしながら、「子どもの発達」について、そしてそのための大人の援助についての研究を仲間達としてまいりました。
その間、『子どもの発達と診断』(京都大学田中昌人・田中杉恵著/1982年発刊)が手引き書となり研修と実践を進めました。
そして、1975年。
和久先生が研究開発された赤ちゃん童具、<ケルンボール>、<ママボール>、<ケルンブロック>などに出会いました。その時の、驚きと感動は今も忘れません。
保育園の乳児室に出向いて、<ケルンボール>を届けると、泣いている赤ちゃんがピタリと泣き止み、「球」を見つめ、手足を動かし体いっぱい反応します。
この時、自分の保育経験と「球」の童具が目の前でつながり、一致し、童具共育への確信が深まりました。
育児、保育にこの童具は必須だ!
その想いで家庭や園に出向き童具を届けたり、集団保育の場で積木のワークショップを実施したりしました。
「どの子ども達も日ごろ見せない集中力が生まれる」との保育士の言葉も聞きました。
積木についても集団積木の「質と量」は、今までにないダイナミックさで、どの年齢、月齢においても「発達的欲求」を満たしていると実感しました。
子どもの集団がこの積木活動をどのように展開していくのか、また個々の子が何を発見し、学び、成長していくのか、私自身で実践し、もっと確かめたい。
その思いから私は『絵本館ホップツリー』を設立し、親子積木教室や、保育園・幼稚園でのワークショップを実施すると同時に、『童具共育講座』を受講するようになりました。
和久先生の講義では、私にとって未知だった形と色の世界の科学や美しさについて、知性や感性について、また秩序と関係性について等々、多様なものの見方を学びました。
そしてついに私は「個々の子どもの発達」「新しい幼児教育のあり方」を童具共育の理念で模索したいと、『和久洋三のわくわく創造アトリエ』の開設に踏み切りました。
いろんな子どもから様々なことを学びましたが、忘れられないのはM君のこと。ボンドや絵具のベトベトが苦手で、入会から3年間、作品が未完のままで終わっていたのが5歳になった当時、戦国時代に興味をもったのか、侍になりきっていました。講師はM君の世界に飛び込もうと、ある時「"加賀五彩"という色があるよ」と色を見せてみました。その色を身近に感じたのでしょうか。その日初めて自分から絵具を筆で塗りながら「ボク、イマ、ジブンデ、ガンバレ、ガンバレッテ、イッテルヨ」と自分に言い聞かせていました。自ら成長したい願望を言語化している瞬間だと感じ、奇跡を見ているようでした。
その後、M君が徐々に壁を越えていく様子を見守りました。身の回りのおもちゃの黒色をすべて捨てるぐらい苦手な色であった「黒」を使って、魚を描き上げたことがありました。そして、その絵を家で布団の中に抱いて眠っていたとのお母さんのご報告。
色彩に心を開かれ、アトリエで過ごす時間の中でこれまでになかった「美しさ」をM君がわが物にできたうれしいエピソードでした。
『金沢プレイルーム』の開設から15年が経ちます。
100人の子ども達との出会いは100通りの道筋がありました。
今は講師として子ども一人ひとりの内面を見つめ、子どもが「やり切れた」と思える活動を粘り強く進めてゆくことを大切に、子どもに寄り添いながら学びながら、一日一日を楽しませて頂いております。
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