私は25年間保育士として幼稚園で働いていましたが、やりたいことが見つかり、時々東京でのセミナーに通っていました。それは、海外ボランティアです。
戦争で身体や心に傷を負った子、親を亡くした子ども達のお世話がしたい。
でも世の中そんなに甘くはありませんでした。私は語学が苦手で、手話は日常会話位はできますが、国内だけです。
主催者側はまずは「御寄付を」とのことでしたが、私の意図したものでなかったので諦めました。
そんな時、勤めていた幼稚園の園長先生から「高木先生の好きそうな研修会があるから行ってらっしゃい」とのこと、田舎者の私はウロウロしながら東京の童具館へ向かったことを覚えています。当時は今みたいにハイテクなものはありません。童具館に無事着くと、そこには大勢の参加者がいました。人見知りの私はドキドキです。
和久先生はニコニコしながら出迎えてくれました。
先生のお話を聞いているうちに自分の保育指導に疑問が出てきました。
先生は「好きなようにやらせりゃいい。作品がぐちゃぐちゃになっちゃっても、その過程が大事なんだよ。無我夢中になって一つのことをやりとげる姿が素晴らしい。その集中力が大事なんだ。形は誰だっていつか描くようになるよ」と話されていました。
私は園児たちの力(創造力)を奪ってしまっていたと気付かされた瞬間でした。
それから数年後に幼稚園を退職しました。学校を卒業してから幼児教育の現場にいたので、家でのんびりは無理でした。福祉の勉強もしていたので、介護の仕事もやってみましたが、いつも帰り道は胸が痛くなり涙がこぼれてきます。
その反対に子どもは元気を与えてくれます。うるさいのも、にぎやかなのも元気な証です。子どもが静かな時は病気か何かままならぬことをしてしまった時。病気の時は心配でたまりませんが、それ以外は子どもまかせです。だから元気が一番です。
前置きが長くなってしまいましたが、そんな頃にアトリエ開設を考えはじめました。でも知らないことばかりで何から手を付ければいいのかまったく解りません。ただやりたいだけではちっとも前に進みません。自分の気持ちが薄れないように友達に相談をしたり、小さな用具から揃えることを始めました。
最初に買ったのは雑巾の束です。笑えますよね。とにかく大きなものは後回しで小さなものから揃えていきました。植木皿、筆洗、ボンド等々。次はいよいよ場所探しです。何もかもが初めてであたふたする毎日でした。
そして、平成17年10月に開設を迎えました。今思うと、無我夢中で動いていました。
そして、ようやく『わくわく創造アトリエ』がスタートしました。
性格的なこともあって、汚れていたり物が散らばっていたりするのが苦手な私は、大きな机に付いたペンキや絵の具も毎回きれいにしていましたが、ある日突然やめました。無理でした。机板の両面を使い分けすることで納得することにしました。いつの間にか机の汚れもなかなかのアートと思えるようになりました。
アトリエに通う子ども達は毎回嬉しそうにやってきます。初めてアトリエに来た幼小さんは緊張で物静かに活動しますが、2回目からは先週とは別人です。アトリエはそういう所なのでしょうね。自分の好きなように邪魔されることなく楽しめる。
「先生はいっぱい遊べていいなあ、ずるい」なんて言われたりもします。
子どもって可愛いと思っていましたが、今では愛おしくて仕方ありません。年齢のせいでしょうかね。
こんなに楽しく、そして子ども達の成長が見られる仕事は他にはないでしょう。
先週できなかったことが今週はできた。そんな姿も何度も見られます。
体験参加で泣きながらアトリエに入ってくる子、緊張している子、でもいつもお母さんに話します。
「少し慣れるまでお顔見ないように接しますね。帰りは別人ですよ。にこにこして帰りますよ。そして、もっと遊ぶって言いますからね」
ほら、その通りになりました。
初めてのボンド、絵の具、筆、パレット、筆洗バケツ、新鮮に感じるのでしょうね。絵の具混ぜ混ぜが楽しい、お水ピチャピチャも楽しい、ボンドは少し苦手、でもそのうち指で塗れるようになります。
もう面白くて手が止まりません。作品は未完成でーす。いいじゃないですか。待つこと、見守ることも大切なんです。昔の私ならあり得ませんが。初めての積木活動で、積んだらガシャーン、積んだらガシャーンの繰り返し、でも今はいいじゃないですか、と見守ることができるようになりました。それも創造活動です。つくった形が一瞬でなくなる、しかも音をたてて、この活動を経験しないと次に進めません。
私は活動中に子どもの「あっ、いいこと考えた」「あっ、いいこと思いついた」の声を聴ける時が一番嬉しいのです。
そして最後に、大切なお子さまを私に預けていただき、いつもアトリエを理解して下さる保護者の皆様ありがとうございます。合掌。
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