童具館プレイルーム/会員様のお便り
『光が空から降ってくる』と題した作品。球体の発泡スチロールに白地の余白を残し、木の枝に二羽の小鳥がとまり、明暗を示すような木の葉をパラパラと散らし、低部に水を思わせる深い青を一筆走らせていた。ここ最近の息子の作品には色を重ねて自然に近い色を探し求めている様子が見て取れる。
今このテーブルには地球の色を再現したという深い緑やオレンジで彩られた石膏の作品がある。下校の道草で母の私へのプレゼントと差し出された季節の草花のブーケを空き瓶に飾り添えている。息子曰く「渋い色」と評すアースカラーの息子のリキテックスの絵画作品も日常目にするテレビの上の壁に線対称に飾ってある。
南西の陽ざし降り注ぎ、窓越しに借景の桜と欅の木の葉が揺れているリビングの一角。家族団らんのその場所は息子の積木場所と化している。ソファで読書する父、キッチンで過ごす母の私も息子の息づかいまで聞こえてくる距離感。息子の積木遊びには常に一人のお喋りがある。そっと眺めていると視線に気づかず彼の空想戦国時代が展開されている。基尺がぴたりと合う積木と<くむくむ>でまず城を築いているようだ。次に外堀を固め、カラフルなかずの木は鉄砲として配置されている。<かずの木>1のブロックにピンを差し、色別のビーズで色分けをして兵に仕立て、数を揃え軍勢に見立てている。攻守劣らずの合戦を空想の世界で堪能しているのだろう。柔らかな光降り注ぐ妄想戦国時代に思わず苦笑してしまう。合戦現場はそのまま残されダイニングテーブル横のその場所で必ず小さな兵士に父母は躓くことになる。カーテンを閉めようとすれば音を立てて城は崩れ落ちていく。この日常に、もう慣れっこになった。崩壊していく合戦現場に足を取られつつよくよく覗き込んでみると、<ワールドピース>を重ねて櫓を組んでいる。細かな芸にここでも苦笑。色とりどりのモザイクも合戦に有効なツールのようだ。色を揃えて器用にも、ひとつひとつプレイカーペットに次々と立てて並べ合戦を再現。<マグネットモザイク>では、小さな円のモザイクを転がしピタゴラスイッチの様なコース作りに勤しんでいる。そろそろ小学校高学年へ近づいてくると下校が遅くなったりやるべきことが増えたりと家庭で過ごす時間に制約が出てくる頃となってきた。しかしながら、隙間時間を上手く使い幼き頃より親しんできた童具とのひとときを愉しんでいるようだ。かつては母と一緒に遊ぶことを求めていたが、今は同じ空間の少し離れたところから互いに別のことをしながらも時々見て欲しい様子。背伸びをしながらも甘え心をチラリと覘かせる。
アトリエへの道中、いつの間にか助手席にちょこんと座りドライブ気分でUKロックに耳を傾ける息子。アトリエへの片道約一時間の旅は八年目を迎えた。大好きな読書、自然との触れ合い、学校生活、息子を取り巻く小さな世界から月に数回のエスケープ。わくわくアトリエは息子にとってちょっとした小旅行なのかもしれない。いつかくる卒業の日までの道のりをよき時間にしたい、そう思いながらまたハンドルを握る。
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